八光自動車工業株式会社様 / 理想を"現実にする"力 ~共に歩んだパートナーシップの記録~
PROJECT INTERVIEW
高級輸入車正規ディーラーの"こだわり"のショールーム展開
譲れないこだわりを次々と実現してきた"その軌跡"
八光自動車工業株式会社は1959年創業、62年もの歴史をもつイタリア・イギリスの高級車の正規ディーラー。創業当初から自動車整備工場、板金塗装工場を自社で保有し「イタリア車は故障が多い」という当時のイメージを払拭、技術力で顧客を獲得してきた。現在ではグループ全体でアルファ ロメオ、フィアット、アバルト、マセラティ、マクラーレン、ジャガー、ランドローバー、アストンマーティンと8つもの高級ブランドの正規ディーラーとして、日本全国のイタリア車イギリス車好きの注目を集めている。さらにお客様にカーライフをより楽しんでいただく場として2019年に「六甲山サイレンスリゾート」の経営もスタート。今回は代表取締役池田晋八社長からショールーム作りへの思い、こだわりについてお話を伺いました。
CLIENT
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池田晋八様
八光自動車工業株式会社 代表取締役
2021年4月に八光自動車工業株式会社の代表取締役に就任。数々のショールーム建設の経験から、建設のプロである阪急CMのメンバーも「池田社長は図面も読まれますし相当ご自身で建築について勉強なさっている、知識も豊富で同じ業界の人のように感じる」と驚くほど。現在も、本国のCIを生かしながらお客様の目を引く、魅力的なショールーム作りに精力的に取り組んでいる。
INTERVIEWER
植松 陽介・吉水 悟
阪急コンストラクション・マネジメント株式会社
大阪本社 CM部
「この予算で本当に実現できるのか」最初のCM業務が驚きの体験に
CM会社の導入のきっかけを教えてください
毎年ショールームの新築や改装の案件が続いている中、コストダウン効果だけでなく、工法や材料の妥当性やプロジェクト全体のマネジメントを「発注者をサポートする立場」で一緒に推進していただけると伺い、導入することにしました。
当時社長(現会長)の方針で「面白い建物」を輸入車ディーラーのショールームとして使いたいという意向が強かったこともあり、個性の強いアトリエ系設計事務所と組んで行っていました。昔は本国メーカーのCIのルールはさほど厳しくなく、こちらが所有している建物に指定の看板、床材を用いるくらいの決まりだったのですが、今ではもう面積やレイアウトなど細かく設定されているためデザインの個性が出しきれなくなり、せっかくいいデザインを考えてもらってもそれを活かせない、このままのやり方でいいのだろうかという違和感を持っていました。建物のデザインに独自性を持たせることとコストダウン、どこにベストな道があるのか模索していたところ阪急CMさんをご紹介いただき、西宮ショールームのプロジェクトに参画してもらうことになりました。
デザインも予算も決まっていた。その予算に合わせるためにCMの力を発揮!
西宮はすでにデザインコンペが終了していて、デザインも予算も決まっていましたね。しかし見させていただいた内容は予算に合わなかったため、我々のCM業務が力を発揮できたのかなと感じています。
そうですね、実際に現場で働く発注者側の要望をアトリエ事務所の設計士に伝えるだけではコストが膨らむ一方という状況の中、さまざまな角度から検証していただきました。当初の計画よりも設計期間が大幅に長くなってしまいましたが、建築の素人では追及できない細部にまで設計士に言及できたところが私には大きなメリットでした。毎週水曜の定例会、長時間打ち合わせさせていただいた時のことを今でも思い出します。この西宮プロジェクトはデザインの面白さもさることながら設計士の思いが強かったのでその押し引きが大変だったなと。デザインはこのままでいきたい、でもCIで面積は決まっている、予算も大幅に膨れ上がっている…。最終的にフロアを1つ抜き、VE・CD*も行って予算を抑えるという方法に落ち着きました。結果的に億単位の予算削減ができたことは大変ありがたかったです。
*VE=Value Engineering(機能や品質を損なわずコスト低減を図る手法)
*CD=Cost Down(材料や性能などを見直すことによりコスト低減を図る手法)
こだわりを形にするのは、「強固」なパートナーシップ
「CM」は直接設計や施工を行うわけではないので、残念ながら口だけ出して手を動かさないという印象があるお客様も多いのですが、池田社長はCM業務をどうお感じになられましたか?
阪急CMさんの場合は専門家の視点を持ちながらも一緒に歩んでもらっているということが最初から感じられ、ご担当いただいている植松さんと吉水さんとのパートナーシップも打ち合わせを重ねるごとに強固になりました。例えば、当初の予算から2億円近くも膨れ上がり、実現不可能かなという思いも頭をよぎったほどのコストを予算内にまで抑えたその手法は、単純に面積を減らせばいいというものではなく、材質、工法、様々なことを協議し細かく改善点を見出していく進め方や、プロの目で設計士、施工会社に作業上の懸念点を指摘されるところは、レベルが違うなと感じました。またスケジュールの進め方は素晴らしかったです。御社のCM業務は、私にとってはとても満足のいくものでした。
西宮プロジェクトの次は「アルファ ロメオ・フィアット/アバルト大阪東」プロジェクトでした。その時の話をお聞かせください。
我が社にとって初めてのゼネコンによる設計施工案件でした。地主との賃貸借契約の切り替え、既存の建物が建て貸しになっていたのでその精算、本国のメーカーからはスピード感を求められ、それに応えられなければディーラー権を取り上げられてしまう…。色々な交渉が並行して行われている中で、御社に基本計画から一緒に入っていただけたのは大きかったです。
時間はかかりましたが、丁寧に何度か立ち戻り、エレベーターのシャフトの位置、出口の位置を変更したりなど、よくあの限られた時間でやり切ったなと。企画段階から御社に入ってもらうこの体制が間違いないなと感じました。さらに、工事が始まってからは、コストダウンと妥当な工法、工期についてベストを尽くしてくれる人がどういう人なのかということを体感でき、この案件は私にとって非常にいい勉強になりました。
大阪東プロジェクトでよい座組ができ、その後仮店舗なども含めると13件ものご依頼をいただいています。当社の評価ポイントはどういった点でしょうか?
イタリア本国のメーカーより詳細に決められたデザイン基準をしっかり把握し、その上で施工者に対してより細かな検証・指示を出していただけるようになった、これは回を重ねるごとに変化として感じていた点です。私たちのプロジェクトに一緒になって向き合ってくれているんだなという「パートナーシップ」の空気感。次の依頼も阪急CMさんにお願いしたい、と継続しているのはそういうところだと思います。「発注者とその外注先」という付き合い方ではなく、「パートナーシップ」を対等に保ち、長くお付き合いをするためにどのような意識で向き合ってくれているか。13案件も続けてご一緒したいと思ったのは、お客様と私たちが出会ってコミュニケーションを重ねていく大切なショールームと整備工場は、日々断続的に進化しており、そこに阪急CMのみなさんも寄り添って並走してくれているように感じているからです。お互いの信頼関係とコミュニケーション、ネクストステップへの思考の一致、そういったことがいい形でキャッチボールのように保てているからこそ、自然発生的に「実は次、サービス工場について考えているんですけど」とか「この案件をやっているとあのお店もここが気になって」とどんどん相談したいことが増えていく。とても良い関係性が築けていると思っています。
苦労してでも叶えてきた目標/全てはお客様とプロジェクトに関わった方々の「幸せ」のために!
少し内容が具体的になりますが、新築と改修、発注者として重要なポイントは何でしょうか?
改めて考えてみると、新築と改修の「違い」はなかった、というのが結論です。新築でも、改修でも、共通して大切なのは「コストと工期」。次に、現場のオペレーション効果と店舗経営効果を最大限に引き出せる施設にできるかどうか。このバランスです。
常に私の頭によぎるのは、この先30年、スタッフとお客様が良き時をこの場で過ごせるかどうか。それから、店舗に携わった人たち全員、設計や施工も含め、このプロジェクトに携わった方全員が充実した人生を送る一場面となったと感じられるだろうか、ということです。プロジェクトに関わった方々がショールームの前を通り過ぎる時、「あの時ここで自分は結構がんばったなぁ」などと振り返る、心に残る仕事になっていたらいいなと思います。
これまでの案件を振り返って、いちばん苦労された点についてお聞かせください。
一番苦労したのは西宮の案件です。阪急CMさんに入ってもらう前のプロジェクトも振り返って考えてみたものの、やっぱり西宮。設計士によるデザインの秀逸さと、施主の思い、実現してくれる施工者、みんなが思うベストの状態を作るにはどうしたらいいのかとても悩みましたから。大変なプロジェクトでしたが、結果、反響がとても大きかったのもこの店舗です。前を通る人たちの目を引く、ご来店頂いた方々の心に残り、さらに働いているスタッフも誇りを持ってサービスできる、そういった効果は店作りに費やす労力に比例しているものだなと思います。おかげさまで売り上げは3倍、しかもまだ伸びしろがある。苦労した甲斐があったと感じるプロジェクトです。阪急CMさんに設計の段階から参画いただいてなかったらと思うとゾッとします。コストも、出来上がりも、きっと今のようにはなっていなかったでしょう。我々の経験だけでは、30%近いコスト削減は不可能だったでしょうから。
いま、話題となっています「六甲山サイレンスリゾート」についてもお聞かせいただけますか?
個性豊かなお車をご購入いただいたお客様方に、ドライブやサーキットで走りを体感することや、様々なイベントを通してブランドの世界観を味わうことなど、オーナーシップの楽しみを色々と提案してきたその延長線上に「六甲山サイレンスリゾート」があります。大阪市内から1時間あまりで標高700mまで上がると、気温が一気に7度下がり、非日常な大自然の魅力を堪能できます。そして、90年以上の歴史を持つホテルの旧館をリノベーションしたカフェテラスと、絶景を見渡せる空のダイニングで憩いのひとときをお過ごしいただく…。実は、さまざまな建築家の方にこの旧館の相談をしたのですが「解体して新設する方が経済的」という意見が圧倒的だったのです。ですが唯一、イタリア建築界の巨匠ミケーレ・デ・ルッキ氏は「修復して次の世代に遺しましょう」と言ってくださいました。今後は宿泊棟やイベントスペースなどを整備し、六甲山の魅力を存分に体感していただけるようなリゾートをご提案していく予定です。
六甲サイエンスリゾート:https://rokkosansilence-resort.com/
当社にさらなるご要望などあればぜひお聞かせください。
阪急CMのみなさんへの要望は、「ありません」。これはもしかすると一番の褒め言葉かもしれませんね。現在のパートナーシップ、スピード感、現状の座組を保ちつつ、新たなメンバーも育てながら進んでいければ言うことはありません。
これからCMを検討しているという方々には、やっぱり「餅は餅屋」ですよとお伝えしたい。経営者自身が時間や労力を注ぎ込むより、プロに任せる方が経営効果が高いと感じます。細かなことでも気兼ねせず連絡できる関係性ができれば、CM業務ほど頼りになる、効率のいい手段はないと私は思っています。
本日は貴重なお時間をありがとうございました。
ありがとうございました。
今回お話を伺ったマセラティ大阪北ショールーム
施設名 | マセラティ大阪北ショールーム |
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所在地 | 大阪府池田市 |
改修基本計画 | 阪急CM |
デザイン立案 | 阪急CM |
実施設計・施工 | 三和建設株式会社 |
竣工 | 2021年(改修) |