REPORTプロジェクトレポート

岩井機械工業株式会社様 新本社社屋新築プロジェクトCM業務

PROJECT INTERVIEW

発注者視点で計画を円滑にロスなく牽引!

担当者や経営層が納得して意思決定が図れるマネジメントを的確に実施!

PHOTO:岩井機械工業株式会社 新本社ビル

 弊社が20146月よりCM業務をご下命いただいておりました、岩井機械工業株式会社様ご発注の「本社新社屋建設計画」につきましては20176月に竣工を迎えました。岩井機械工業株式会社様は、飲料・食品・医薬品製造設備のプラントエンジニアリング会社で、お取引先各社の各製品にあわせた、プラント製造にかかる各種サービスをご提供されています。殺菌・滅菌・洗浄技術の強みを活かし、今まで培ってきた流体処理技術を中核として「顧客対応力世界No. 1」のプラントメーカーを目指されています。この度、同社において当計画をご担当されました坂元グループリーダー・甲谷主任に、弊社のCM業務に関する感想をお伺いいたしました。

CLIENT

  • 坂元 政人

    岩井機械工業株式会社

    経営企画部 経営企画グループ

    グループリーダー

  • 甲谷 淳

    岩井機械工業株式会社

    総務部 総務グループ 主任

INTERVIEWER

松﨑 宏二・林 秀行

阪急コンストラクション・マネジメント

東京本店

※本インタビューは阪急CMが発行する阪急CM CHNNNELvol.30に掲載された内容を再編集したものです。掲載されている情報は取材当時のものです。

CMとは発注者側の利益確保を目的として、発注者のプロジェクト推進をサポートする業態であることを認識しCM導入を検討。

本計画の企図をお聞かせください。

 1970年に竣工した旧本社ビルは、2011年に制定された「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」において特定沿道建物に該当しました。これに基づき耐震診断を行ったところ「建替え・補強」の努力義務が課せられ、その後、耐震補強の検討を行いましたが、補強により手狭で使い勝手が悪くなることが判明し、また諸々設備の老朽化も進んでいたため、201312月、本社敷地内に本社社屋を新築する検討を進めることになりました。

どのような経緯でCM採用に至ったのでしょう。

 かつて当社が発注してきた工事案件では、最終的に必ずしも納得のいく結果となったわけではなく、また、当計画の担当となった我々は今まで工事発注の経験が多いわけではなかったので、当計画を成功裏に進めるにはどのようなパートナーを選べば良いのか正直迷っておりました。

 このような状況で、取引銀行の担当者から「CM」というプロジェクト推進手法の情報提供を受け、その後、複数のCM会社担当者との面談を通じて「CMとは、発注者と利益相反する設計者や施工者側の立場ではなく、発注者側の利益確保を目的として、発注者のプロジェクト推進を量的・質的にサポートする業態」であることがわかり、正に当社のプロジェクト推進にCMの採用は相応しいと判断するに至りました。

 その後、CM会社複数者間によるコンペを通じて、阪急CMに委託することになりました。阪急CM採用の決め手は、発注者側や我々担当者側が将来悩むことになるであろうと想定される課題を業務メニューとして、細部に至り(建築設備面以外のオフィスレイアウト検討や什器備品調達も含めて)提案していただいたことです。我々のパートナーとして安心して計画推進を委ねられる会社であると判断し発注の意思決定をいたしました。

阪急CMとゼネコンが互いに相手を尊重しながら計画を推進。相乗効果で、すばらしい技術が結集した建物が完成。

CM業務についての感想をお聞かせください。

設計と施工の発注フォーメーションについて

 当計画では、様々な発注方式の中から、「基本設計を阪急CMで立案し、その基本設計を基に、ゼネコンへ実施設計と工事を発注する方式」を採用しました。 この方式の採用の決め手は「基本設計を基準に、競争原理が働いた選定ができる」「施工者のエンジニアリング力を設計に反映できる」「建設需要が逼迫している状況下で早期に施工者への発注を決めることによる計画遅延リスクが回避できる」「ゼネコン決定後の設計変更等によるコストアップとなるリスクはCMによるマネジメントで担保できる」ことなどが挙げられます。これも、阪急CMが提案段階から様々な発注方式の中で、当計画に相応しい方式を提案いただことによるものが大きいと感じており、我々もそれを充分納得できた上で方針を固めることができました。

基本設計段階

 基本設計立案では、阪急CMは我々の要求事項を充分に把握し、単なるハコだけの提案ではなく、当社の部署間のコミュニケーションの活性化が図れるような提案や、我々が採用したいBCP※1対策、また、省エネについての様々な技術提案や他施設の見学・セミナーへの出席の企画等、親身になって対応いただきました。さらに、阪急CMからの週1回開催する定例会議での提案では、全て丁寧に説明をされ、各ポイントにおいて我々担当者や経営層が納得して意思決定が図れるようマネジメントもしていただきました。

 大きなエピソードとしては、当初は、本社事務所棟と臭気・騒音・振動が発生するテストプラント(当社製品納入を検討されているお客様に当所へお越し頂き、実際の製品の稼働状況をご確認頂くための施設)とは別棟で計画していましたが、阪急CM側より、テストプラントと本社棟を一体化した方が、経済的かつ効率的な運用が可能になるとの提案を受け、新案での検討を行うことになりました。本社事務所執務スペースにテストプラントの臭気・騒音・振動が影響しないようにすることが大きな課題でしたが、このような大きな計画変更にもかかわらず、阪急CMには、構造・設備面等で様々な検討を行って頂き、実現可能な提案をしていただきました。竣工した現在、このテストプラント稼働による本社事務所執務スペースへの影響も全くなく、運営上お客様へのご案内も支障なく対応できております。

ゼネコン選定段階

 大手ゼネコン・準大手ゼネコン複数者を指名し、VE提案※2付プロポーザルコンペによりゼネコンを選定しました。建設需要が逼迫する中で果たしてゼネコン(特に、スーパーゼネコン)はコンペに参加頂けるのか? と懸念していましたが、この不安とは相反して、参加されたゼネコン各社からは、請負金額が減ってしまうことになるVE提案も含めて、本当に熱心な提案を行って頂きました。最終的な決め手は、コストによるところが大きいですが、清水建設の技術力(特許技術も含む)を存分に盛り込んだ熱意のあるVE提案を頂き、また、当社としても日本有数のエンジニアリング力と信用力を有していることや、担当いただける技術者の方々のパーソナリティーも申し分ないと判断し、清水建設に発注する方針となりました。

 これも、阪急CMが、ゼネコン間の競争原理が働くようなコンペ方式を企画し、また、当計画におけるゼネコンからの有効な技術提案を求めて評価の上、最終的に発注コストの妥当性を見極めるマネジメントを行って頂いたことによるものだと思っております。

実施設計段階・工事段階

 実施設計に着手し、今まで基本設計で検討してきた内容は的確に反映され、その上、清水建設の有する様々な技術ノウハウの提供・採用により、最終的に満足のいく実施設計が完成いたしました。設計会議の推進プロセスとしては、週1回の定例会議を通じて、設計内容の各種検討事項の調整(発注者側の意思決定事項の整理や設計者として検討する項目の課題整理)を的確に行いながら、順次設計内容を固めていくという方針を、阪急CMのマネジメントにより着実に実施いたしました。

 阪急CMと清水建設側とは、互いに相反する立場であるので計画を進めていく上で衝突が避けられないのではないかという不安がありましたが、阪急CMも清水建設も、お互い相手の立場・技術力を尊重しながら、一丸となって親身に計画へ傾注していただいたと感じております。着工後は、清水建設の施工チームも参画し、週1回の定例会議を開催しながら、工事進捗に伴う様々な確認事項や詳細仕様決定、設計変更承認のプロセス等を協議して参りました。工事中においても、毎週のように発注者として意思決定しなければならない項目や課題が山積していた状況で、CM会社のマネジメントなしではとても対応しきれなかったと痛感しております。

最後に竣工後のお気持ちをお聞かせください。

 今年6月、おかげさまで当計画は、無事完成いたしました。これは、実施設計・施工を担って頂いた清水建設が、当計画へ惜しみない技術力を発揮いただいたことと、ご担当の方々の優れたパーソナリティーなしでは実現できなかったと思いますし、阪急CMが発注者側の立場で、計画を円滑にロスなく牽引し、当社の経営層や従業員皆が、計画の各ポイントにおいてコスト・品質・スケジュールに関して納得して意思決定を図れるためのマネジメントを的確に実施して頂いたことも大きな成果であったと思います。

 CM採用の費用対効果としては、当初の予算や、ゼネコン競争時における各社の提示コストの差を勘案しても、CM導入の価値は充分にありました。今から振り返ってみても、CM採用の短所が全く見当たりません。今後も、当社で建設計画が持ち上がりましたら、是非ともお声がけさせて頂きたいと考えております。

本日はお忙しいところどうもありがとうございました。

※1 BCP
自然災害等発生時における、事業継続させるための方法・手段等を取り決めておく計画。
※2 VE提案
機能や品質を低下させることなく、コスト低減させて設計改善する提案
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