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- 改修工事
既存施設の空調改修のメリット
バブル期に大量に供給された中小規模のビルやそれ以前のビルの多くは、築20年以上を超え、竣工当時に設置されていた空調設備の多くは、機器・配管・制御系等の老朽化、操作環境・基本性能の陳腐化、保守管理体制への対応が十分でない等の問題が生じ、改修工事が必要となっています。 省エネや機能性向上など新たなニーズに対応し、新築ビルに劣らない資産価値・省エネ性能を確保するというビルオーナーとテナント双方の視点にたち、本ブログではその改修工事のメリットについて触れていきたいと思います。 Ⅰ 経年劣化で発生するリスク 経年劣化で発生するリスクには「物理的劣化」「経済的劣化」「社会的劣化」の三つのリスクが存在します。 物理的劣化のリスク 築20年以上経過し、機器・配管・ダクト・制御系の経年劣化に起因する故障発生率の増加や、メーカーの部品供給停止により、修理が不可能になるリスクがあります。 経済的劣化のリスク 経年劣化に伴う保守コストの増加及び、故障発生時の復旧には多大な費用が必要になります。また、ビルの信頼性が損なわれるリスクも増大します。 社会的劣化のリスク 近年多く採用されるエリア毎に条件設定可能な「個別分散方式」に対し、バブル期の空調方式は個別に温湿度などが調整できない「セントラル空調方式」であることが多く、省エネの観点からも新築ビルに比して年々陳腐化し、社会的ニーズに対応できないリスクがあります。 Ⅱ 改修工事で期待できるメリット 改修計画は、ランニングコスト・資産価値等を比較検討した上で、既存機器のオーバーホール(分解洗浄)、制御系の改修から新しい機器・方式への更新まで、複数の選択肢から組み立てていきます。例えば築20年以上経過したビルの空調機器を従来型の「セントラル方式」から現代型の「個別分散方式」への改修すると以下のようなメリットが生まれます。 省エネルギー化 オフィスビルの空調に消費するエネルギーは、全体の消費量に対して約30%に上ります。空調負荷変動に対し追従性の高い「個別分散方式」に改修することで、省エネルギー化が可能になります。 ランニングコスト削減 保守費の他エネルギー消費量の低減が可能となるのは「個別分散方式」であり、負荷変動に柔軟に対応し、効果的に運転することでランニングコストの削減が可能になります。 資産価値向上 休日対応、時間外対応等のテナント要求に対応する高いフリキシビリティを持ち、エネルギー消費の低減が可能となり資産としての価値向上につながります。 Ⅲ 実施したCM事例 [案件事例]●築37年のオフィステナントビル(地上11階地下2階、約93,000㎡)の空調改修事例です。 [改修理由]●経済的劣化...空調更新を一度も行っていない。●省エネルギー化...現在400V仕様を200Vとし省エネタイプとしたい。●社会的劣化...テナント毎の課金システムを導入したい。[阪急CMにて空調方式の比較検討し意思決定を支援]●既存システムを含めた4種類のシステムを提案●各案のイニシャル・ランニング・メンテナンスそれぞれのコストやメリットデメリットを比較 [結果]●イニシャル・メンテナンスコストは多少かかるが、ランニングコストが低くテナントの課金ができ賃貸対応性(分割・間仕切り対応)が高いC案を採用することとなりました。 Ⅳ 阪急CMの支援 空調システムなど設備改修時には、専門的な知識が必要です。CM方式の導入により、対象の施設固有の様々な条件や要素を勘案し、複数案のメリット・デメリットを比較検討し、発注者がより妥当な意思決定を行えるよう支援することが可能となります。また構想・計画立案、発注支援、設計・工事の各フェーズにおいて、適正なコスト、スケジュール、品質のマネジメントを行えるようになるといえます。我々、阪急CMをお客様の所有資産の資産価値向上に向けて是非ともお役立てください。
2021.06.04
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改修工事に伴う不具合の解決事例について
はじめに 建物の改修工事は、たとえ多くの実績やノウハウを有する施工者が対応した場合でも、不具合が発生してしまうケースがあります。その主な要因は、改修工事の調査・設計段階において対象建物が使用中のため十分な調査ができなこと、また工事段階の期間やスペース的制約により難易度が高い中での作業となること等が挙げられます。[改修工事の不具合の要因例]〇設計段階で現場調査に制約がある〇新築の竣工図やその後の改修図がない〇改修工事の設計図書が不十分〇作業可能な時間に制約がある〇搬入経路の確保や資材置場の確保が不明 不具合が発生してしまった際には、設計者や施工者との協議だけではスムーズに解決に結びつかないケースがあります。また不具合の内容により想定外の費用が発生する場合や発注者と施工者(設計者も含む)間で法的な係争に発展してしまうリスクもあります。ここでは阪急CMが実際に受託した総合マネジメント型CM業務※1のうち工事段階においてご相談を受けた事例で解決に至った事例をご紹介いたします。 事例1 福祉施設の個室改修工事における事例 床置き型ファンコイルユニット(以降FCU)※2の改修を実施したところ、竣工引渡前に夜間のFCUの暗騒音が大きく施設利用者に影響を及ぼすことが懸念された。 原因 選定したFCUが低水量型であったのに対し施設全体の冷温水量が大きすぎたためコイル内での騒音が増大。 対策と結果/CMrの対応 施設全体のバランスを考慮しながら水量調整を行うことで騒音を低減しました。 これは竣工引渡し前に対応した事例です。弊社は発注者の代行者として問題に参画し、改修工事の設計者・施工者及び関係者を集めて、対策会議・現地調査を数回実施し、是正方法・スケジュールを取り纏めました。発注者に中間報告のうえ是正を行い、発注者への報告を行いました。 事例2 更衣室を会議室に改修する工事での事例 会議室のLAN配線は電算室から配線されていたが、テスターによる測定の結果、配線長が100mを超えており、専門業者から伝送能力に責任が持てないとの回答を受けた。 原因 平面計画での机上確認では、100mを超える配線はなかったが、実際には床下から天井までの迂回や障害物による迂回が発生し、120mを超える配線長となっていた。 対策と結果/CMrの対応 ルートを変更し、中間にHUBボックスを設置して中継を行うことで、ルートを短縮化し100mを超えるケーブル配線長を解消しました。 図表提供:阪急CM この事例は改修工事中に発覚した事例です。実際のLAN配線が100mを超えても不具合が発生するとは一概には言えませんが、発注者へは将来的な保証を考慮し、是正することを強くお薦めしました。通信専門業者と設計・工事業者との協議を重ね、対策案を取り纏め、工事費用も工事関係者サイドにて費用負担することで妥結しました。 事例3 地下に出張所を設置した工事での事例 竣工直後に空調ダクトからと思われる振動と低周波音が発生し、業務を行われていた女子従業員が、体調不良を訴える事態となった。 写真提供:阪急CM 原因 天井内の空調ダクトと天井部に遮音対策を行うも、状況に変化はなく、騒音振動源を調査した結果、壁を介して隣接する空調機械室からの振動騒音であることが判明した。機械室内を調査したところ、エアハンドリングユニット※3に接続されているダクトの曲がりが大きすぎたため、ダクト鉄板の一部分にめくれが生じ、太鼓効果でダクト内に振動・騒音が発生していた。その振動騒音がダクトから界壁に伝搬し、出張所内壁を振動させていた。 対策と結果/CMrの対応 ダクト曲がりを緩やかに修正し、めくれた鉄板を撤去・補強した結果、騒音・振動とも良化しました。 この事例は竣工直後にご相談を受けたものです。弊社は発注者の代行者としてビル管理者及び工事責任施工業者と協議を重ね、現場調査と対策方法を取りまとめ、発注者に報告を行いました。また費用についてもビル管理者と協議し、ビル管理者の費用負担で工事実施に結び付けました。 まとめ 以上3つの事例をご紹介いたしました。 利用中の建物を改修する際に生じる不具合は、発注者にとって社会的・経済的損失、あるいはテナントやユーザーに対する補償問題に発展するリスクをはらんでします。よって改修工事は設計段階の未調査部分を入念に確認しながら進めていく必要があります。 こうした背景に精通するのが我々コンストラクション・マネジャーです。 阪急CMにご用命いただければ、改修工事の不具合発生リスクの低減・円滑なマネジメントを通じて皆様のプロジェクトを御支援してまいります。皆様の計画におかれましても、何かお困り事がありましたら是非お気軽にお問い合わせください。 御精読ありがとうございました。 ー Thank you for your reading! -
2020.08.18